みなさん、こんにちは。
審査委員の千葉大学大学院国際学術研究院の田島翔太です。
前回は、「都市問題とSDGs」について解説しました。
しかし、多くの人がこう思うでしょう。
「世界の都市問題なんて、課題が大きすぎて自分には何もできない・・・」
そこで、SDGsと私たちの生活(=地域)がどう関わっているのか、について考えてみたいと思います。
1点目は、「ローカライズ」という言葉についてです。
SDGsは、より良い社会をつくっていくための2030年までに国際社会が目指すべき解決目標です。2015年9月の国連サミットで採択された「2030アジェンダ」に書かれています。
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択する国連サミット(外務省)
アジェンダは、次の一文(前文)から始まります。
このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。これはまた、より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求ものでもある。我々は、極端な貧困を含む、あらゆる形態と側面の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題であり、持続可能な開発のための不可欠な必要条件であると認識する。
すなわち、私たちがまず解決しなければならない問題は、貧困の撲滅です。SDGsの17の目標が「1 貧困をなくそう」から始まるのはその理由です。
しかし、比較的豊かな生活をしている日本人がもっとも関心のある目標は、必ずしも貧困問題ではありません。
「世界の目標=日本人の目標」と一括りにしづらいのが、SDGsを身近に感じることが難しい理由の一つでしょう。
その前提に立って、SDGsでは、個人や企業や地域が、自分たちの目標を持って課題に取り組むことが重要であると考えています。このような自分なりに目標を置き換えてみることを、ローカライズすると言います。すなわち、自分ごとにする、ということですね。
実際に日本政府は、「SDGsアクションプラン2020」というものを掲げ、日本として重点的に取り組む分野を提言しています。これもローカライズの一つです。
SDGsアクションプラン2021(PDF)(外務省)
私の自分なりの目標(ローカライズ)の一つは、千葉県長柄町の地方創生です。
2点目は、地域とサステナビリティの共通点です。
私は、千葉県長柄町という、人口が6,754人しかいない小さな町で地方創生に取組んでいます。千葉県内で2番目に人口が少なく、毎年100人前後のペースで減っている、深刻な人口減少地域です。
このような町で、外から来た人間として、長柄町の魅力の再発見に取組んでいます。私は地域の魅力の再発見のことを、住民の視点に立った「インナーブランディングの醸成」と言っています。つまり、そこに住んでいる人たちが自分たちの地域の良さ・課題を認識し、将来へと繋いでいこうと行動することです。
インナーブランディングの醸成を目的とした、長柄町を元気にする会を大学生、町民の皆さんと立ち上げ、オンラインでプロジェクトに挑んでいます。
このような考えは、SDGsの基本的な考えである持続可能性(サステナビリティ)とも繋がっています。すなわち、「現代のニーズに応え、将来世代のニーズを満たす開発(発展)」ということを、身近な地域レベル(特に人口減少に見舞われている地方部)でも向き合っていかなければならないのです。
そして、一つ一つの地域がより良くなっていくことが、SDGsの目指すグローバルなレベルでの持続可能な発展に繋がっていくのではないでしょうか。
是非みなさんも、住んでいるところ、通っているところ、生まれ育ったところなど、普段何気なく見ている地域を改めてよく観察してみてください。
(千葉大学大学院国際学術研究院 助教 田島翔太)
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