みなさん、こんにちは。
審査委員の千葉大学国際教養学部・田島翔太です。
前回は、「なぜ人口減少が問題なのか」について解説しました。
その中で、東京への人口集中が人口減少を助長する、という国の見解を説明しました。ですが、都市への人口集中は、違う意味で世界では大きな問題で、SDGsにも強く関係します。
ポイントは3つあります。
1点目は、世界の人口のおよそ半数が、都市に暮らしています。
国連の世界都市人口予測によると、2018年現在、世界の人口の55%が都市部に暮らしています(UN, 2018)。これを「都市化」と言います。
都市の定義は国によって様々ですが、日本でも首都圏と大阪都市圏を合わせるとおよそ5,000万人の人口ですから、あながち間違っていない数字でしょう。
2点目は、都市人口の急速な増加です。
現在、都市化が進んでいる地域は北米(2018年の都市化率が82%)、欧州(74%)
などの先進国です。そして、これから経済発展によってアフリカやアジアの国々の都市化が進みます。
2050年には都市化率は68%、そして、増加の9割近くがアジアとアフリカと言われています。
3点目は、人口の移動です。
都市部の人口が増える要因は、純粋な人口増だけでなく、農村から都市に人口が移動することです。
より良い仕事・環境を求めて都市に人が流れてきます。
しかし、そのスピードが早すぎて、居住環境、教育環境、インフラなどが追いついていきません。所謂「格差」が生まれてしまいます。
さらに、相対的に農村部の人口が減ることになります。
少ない農村人口で、大都市の人々の生活(食べ物)を支えなくてはならない(しかも今よりも人口はもっと増えている)、というアンバランスな状態になります。
これらはまさにSDGsの「11. 住み続けられるまちづくりを」の目標そのものです。さらに教育、健康、ジェンダーなど、SDGsで解決すべき様々な課題とのつながりが見えてきます。このつながりに気付くことが、SDGsの本質の一つと言えます。
もちろん都市化によって、国の経済力が高まり、より良い生活が提供されるというメリットもあります。
問題は、SDGsの根本的な考えである「持続可能性な社会」の構築ができるか、ということです。
持続可能な社会とは、現代のニーズに応え(=貧困等の撲滅)、将来世代のニーズ(=より良い暮らし、環境の保全等)を満たす開発・発展を実現することです。
長期的な視野に立って、物事を考えていくことも必要です。
皆さんがSDGsについて考えるときも、単に目の前の問題を直視するだけでなく(それももちろん大事ですが)、他の問題との繋がり、持続可能性を意識した解決策の提示など、広い視野で取り組んでみてください。
次回は、私たちの暮らしとSDGsがどう結びついているのか、について、私が取り組んでいる千葉県長柄町を事例に、「地域課題とSDGs」を考えてみたいと思います。
(千葉大学大学院国際学術研究院 助教 田島翔太)
参考文献
United Nations (2018) 2018 Revision of World Urbanization Prospects.
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